鑓温泉のテン場の夜。
時折目が覚め、聞こえる音はフライシートを叩く雨の音ばかり。
その音は強くなったり、止んだり。
午前4時、テントのベンチレーターから覗く空には星はなし。
「今日は一日雨か~?」
諦めつつ、ジョニーを起こし出発準備をしよう。
白馬三山の最終日の朝は雨。
レインウェアを着こんで猿倉まで800mの下りオンリーのルートです。
(この日は雨天につき、コンデジでの撮影です)
今日も眠たそうなジョニーです。
鑓温泉沿いの沢はどこまでも続くかと思うほどの長い雪渓。
深い緑の中に白く伸びる雪渓とのコントラスト
標高1850m辺りまで下っていくと、コースは深くなる谷を避けるように
等高線に沿ってほぼ水平に進んでいきます。
いくつもの雪渓を越えていく。
雪渓が切れた沢では簡易の橋を渡り、
なだらかな沢に残る雪渓があったり、
慎重にトラバースしていく。
足元が明るくなり、ふと、山側を見上げると
一瞬ガスが晴れ青空が現れる。
いつしか、雨も止んでいたよう。
遠くには烏帽子岩だろうか、その向こうには稜線近くが見えるようだ。
前方に次の雪渓が見えてきた。
杓子沢である。
沢の巾こそ狭いが、この上には頂上直下の杓子の圏谷(カール)があり、
たっぷりの雪を抱えている沢なのです。
しかし、その杓子沢の手前には大きなガレ場があり、今にも崩れそう。
“その心配が現実となる”
この写真を撮った場所を私が通過した直後、上方からひと抱えもある岩が
3つほど落ちてきたのである。
幸いにもすぐに落下は停まり、後続の方のルートへの影響もなし。
ガレ場を過ぎた後は、雪渓のトラバース。
勾配が急なので、滑落、落石に細心の注意を図る。
杓子沢を越え、先ほどのガレ場を展望してみると、
ガレ場の下に雪渓が見え隠れしています。
この辺りはその年の雪渓の状態により、毎年のようにルートが変わるのでしょう。
そして、遥か上方を見ると・・・・
杓子岳東壁が姿を見せてくれました。
この一瞬には ジョニーと二人で 「感動!!」 でした。
前日、天候も悪くピークへ登らなかったこともあり、こうした形で
その姿を拝むことが出来たのは本当にラッキー!!
杓子沢を越えた後もルートは等高線を辿るように水平に続きます。
この辺りからは低木樹林帯が多くなりますが、
ルート沿いにはまだまだ花が沢山咲いており、歩く者を楽しませてくれます。
小日向コルを越えると、小蓮華山、白馬沢あたりが一瞬見えたよう?
しかし、次の瞬間には再び真っ白なガスに覆われて・・・・
さあ、ここから猿倉まであと2時間。
視界の効かない樹林帯の中、標高も下がり気温が上がっていく。
水分補給も頻繁になり、体温上昇が大きくなる。
しかし、それに反してジョニーの足取りは次第に早くなっていくではないか。
今まで、ほとんど先行者に追いつくことはなかったのに、
ここにきて数グループを抜いていく。
ラストスパートの体力を残していたか。
まだまだ行けそうだな!!
後ろから見ていると、浮石や滑りそうな石を上手く避け、
無駄のない快適な足運び。
いつの間にか、山の歩き方を体得していたようだ。
そして、正午ちょうど、ついに猿倉荘到着。
最後は余裕をもったままゴールでした。
父子二人の北アルプス・プチ縦走。
私としても3日間、息子と山で二人きりのことなんて初めての経験。
山行前はジョニーの体力的な問題、体調、怪我などの心配ごともあったが、
とりあえず除くことの出来る問題点は少しでも取り去り、挑んだ白馬三山。
ちょっとジョニーの寝起きの悪さには閉口(笑)しましたが、
一旦歩きだせば遅いながらも確実にそして慎重に進んでいく一歩。
我が息子の未知なる可能性とその成長ぶりを垣間見た3日間。
そして、テントの中で交わした父子の会話。
学校のことや友達のこと。
今日一日の出来事。
高山でのテント生活は初めてのジョニーであったが、
2日目にはそれも慣れてきたよう。
一緒にテントを張り、食事の準備をする。
その行為はまさに父子というよりも良きパートナーであった。
ジョニーよ、また一緒に山へ行こう。テントを担いで。
秋の山もいいぞ、錦絵の山を眺めながらご飯を食べよう。
冬は純白の雪の上でテントを張ろう。
次はどこの山へ行こうか・・・・
次回は最終回として、装備や食糧、そして私と同じように父子トレッキングを目指す方へ
少しでも参考となればと、私なりに備忘録を兼ねた記事をお送りしたいと思います。
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